他の Obsidian 同期ツールとの比較
「Obsidian の vault を複数デバイスで使えるようにしたい」を実現する手段は複数あります。このページは obsidian-remote-ssh と主要な代替手段を比較します — このプラグインが適切でないケースも含めて、率直に書きます。
このページの精神: 「最高のツール」というものは存在せず、各ツールはそれぞれのモデルに最適です。Obsidian Sync のモデルが合うなら Obsidian Sync を使ってください。
一覧
| obsidian-remote-ssh | Obsidian Sync | Syncthing | Dropbox / iCloud / OneDrive | Obsidian Git | Nextcloud | Remotely Save | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| トポロジ | あなたのリモート上の単一正本 | クラウド(Obsidian のサーバ)が正本 | P2P。各デバイスがフルコピーを保持 | クラウドが正本 | git remote が正本 | あなたのセルフホストクラウドが正本 | クラウドが正本 |
| 編集モデル | リモート直接編集(ローカルにフルコピーなし) | ローカル編集 + バックグラウンド同期 | ローカル編集 + バックグラウンド同期 | ローカル編集 + バックグラウンド同期 | ローカル編集 + 手動 commit/push | ローカル編集 + バックグラウンド同期 | ローカル編集 + 手動同期 |
| 認証 | あなたの SSH 鍵 | Obsidian アカウント | デバイス ID | サービスアカウント | git 認証 (SSH/HTTPS) | Nextcloud アカウント | バックエンドごと |
| 保存時暗号化 | リモートホストの責任(LUKS / FileVault / 暗号化 ZFS) | あなたのパスワードによる E2EE オプションあり | フォルダ単位で対応 | サービス側、E2EE はデフォルトでない | git ホスト依存 | サーバ側、E2EE アドオンあり | バックエンドごと |
| 転送時暗号化 | SSH | TLS + E2EE オプション | TLS | TLS | SSH/HTTPS | TLS | バックエンドごと (TLS) |
| 競合モデル | mtime precondition、UI に表面化 | ベクトル時計、自動解決 | mtime + version vector、*-conflict-* ファイル発生 | mtime、*-conflict-* 頻発 | git merge、エディタ / CLI で解決 | サーバ仲介、(conflict copy) 発生あり | バックエンドごと |
| モバイル (iOS / Android Obsidian) | 非対応、デスクトップ専用 (#151) | フル対応 | Android のみ。iOS は Syncthing 自体未対応 | 対応(iOS sandbox 制限あり) | 一応プラグインあり、不安定 | 対応 (Nextcloud アプリ) | 対応 |
| コスト | セルフホスト: 無料 + ハードウェア / VPS 代 | サブスクリプション | 無料 | 無料枠超過後サブスク | 無料 (git ホスト依存) | セルフホスト: 無料 + ハードウェア代 | 無料 + ストレージ代 |
| Selective sync | 不可、vault 単位 | 不可 | フォルダ単位 | クライアント次第 | .gitignore で手動 | フォルダ単位 | フォルダ単位 |
| バージョン履歴 | なし — サーバ側バックアップで代替(recipe 英語) | UI からファイル単位で履歴復元(有料) | オプションのファイルバージョニング | 履歴 / ゴミ箱(有料) | git ネイティブ | ファイル単位履歴 | バックエンドごと |
| オフラインで動くか | 動かない — SSH 到達性必須 | ローカルキャッシュあり | local-first | ローカルキャッシュあり | local-first | ローカルキャッシュあり | ローカルキャッシュあり (ローカルが vault) |
| 「クラウド」消失時のリスク | 該当なし — それ自体があなたのクラウド | 復旧まで使用不可 | 該当なし — 全デバイスが保持 | 復旧まで使用不可 | 全 clone に残る | セルフホスト: 同上 | ローカルコピー残存 |
最重要は最初の “トポロジ” 行。他の特性すべてはここから派生します。
ユーザタイプ別の選び方
「ただ動いてほしい、モバイルも込みで」
→ Obsidian Sync。プロダクト化のコストが反映された有料製品です。運用ストレスをゼロにしたいなら Sync に課金が一番。
「全ファイルを全デバイスに、中央サーバなしで」
→ Syncthing。P2P、中央なし、無料。代償は競合 UX(*-conflict-* ファイル)と Android 限定モバイル。
「Dropbox / iCloud / OneDrive に既に課金してる、新しいものを入れる必要は?」
→ 既存ツールでよい。1 デバイスずつ編集するなら問題なく動きます。古典的な失敗パターンは「ノート PC でオフライン編集 → iPad が一晩で同期 → ファイルを開いたら本物の隣に (conflict copy) がある」。これと折り合いをつけられるなら OK。
「git ライクな全変更履歴が欲しい」
→ Obsidian Git プラグイン。保存(または間隔)ごとに commit。履歴は強力、モバイルは脆弱、git 思考が必要。
「homelab 持ちでセルフホスト派」
→ Nextcloud か このプラグイン。フルレプリカ(vault が全デバイスにある)+ 豊富なエコシステムなら Nextcloud。単一正本(レプリカを管理しなくてよい、デバイスごとのディスク使用なし、edit-on-server モデル)ならこのプラグイン。
「このプラグインのモデルそのもの: vault はリモートに、レプリカなし」
→ obsidian-remote-ssh。これがこのプロジェクトのニッチです。
obsidian-remote-ssh が適切なケース
このモデルが合うのは:
- 常時到達可能なリモートを所有している(Tailscale 越しの自宅 Pi、NAS、VPS、職場開発機など)
- vault の N コピーを持ちたくない — 単一正本がそのまま欲しい。「どのデバイスが最新か」問題が発生しない
- 既に SSH 鍵 + Linux 思考 — 既存のセットアップに SSH ホストを 1 つ追加するのは運用負荷ほぼゼロ
- 第三者クラウドを許容しないプライバシー要件 — ノートはあなたのサーバ以外に渡らない
- デスクトップ中心 — モバイルが「あったら良い」程度なら問題なし。必須要件なら下を参照
- 巨大 vault (10k+ files) — プラグインは遅延フェッチ。各 PC に数万ファイルを保持しなくて済む
obsidian-remote-ssh が不適切なケース
正直なところ — 不適切な理由で間違ったツールを選ぶのは自分が困るだけです:
- モバイルで編集したい — デスクトップ専用 (#151)。Obsidian Sync か、モバイル Obsidian + Syncthing/Nextcloud を
- オフライン頻発 — SSH 到達不可 = 編集不可。レプリケーション系(Sync, Syncthing, Dropbox, Nextcloud)はオフラインでも編集できる
- そもそもリモートを持っていない — このプラグインのために VPS を立てるのは別に問題ないが、「インフラを持ちたくない」が目標なら Sync か Syncthing を
- UI からファイル単位 undo したい — 提供してません。Sync(有料)か git 系か、サーバ側 restic backup(英語)と組み合わせて「undo は CLI 復元」と割り切るか
- リアルタイム共同編集 — どのツールでも 2 人同時編集は競合領域だが、このプラグインは特に厳しい(mtime check で片方が conflict)。共同編集ワークフローには HedgeDoc / etherpad 系を見るべき
個別ペアの深掘り
vs Obsidian Sync
精神的に最も近い競合(両方とも “Obsidian-aware sync”)。境界線は 正本を誰が所有するか:
- Sync: Obsidian のサーバ。サブスクで モバイル + ファイル単位履歴 + クロスデバイス E2EE が手に入る
- このプラグイン: あなたのサーバ。無料、運用面が広い、モバイル未対応
Obsidian Sync は良いプロダクトです。サブスク代を払えてデータレジデンシー的にも問題ないなら、低摩擦の選択肢。このプラグインは特にセルフホストが目的の人向け。
乗り換え予定なら 専用の migration ガイド(英語)。
vs Syncthing
Syncthing は 逆方向のトポロジ — 「中央サーバ」ではなく「全デバイスがフルコピーを持ち peer 間で gossip」。長所:
- 真の P2P、中央が一切ない
- 無料、セルフホスト、成熟
- 全デバイスで完全オフライン動作
このプラグインより難しい点:
- 全デバイスでディスク圧迫 — 5 GB の vault は全デバイスで 5 GB 使う
- 競合 UX — 2 ノート PC で同ファイルを編集すると
*-sync-conflict-...mdが生まれ、手動で reconcile。(このプラグインも 2 クライアント同時編集で競合は起きるが、保存前に Obsidian UI 側で表面化する) - iOS Obsidian なし — Syncthing そのものが iOS 非対応
ノート PC 1 台 + Android スマホ 1 台なら Syncthing は良い。デバイスが 4 台 + スマホとなると、ディスク + 競合の話がこのプラグインの中央サーバ型より厄介になる。
vs Dropbox / iCloud / OneDrive
動くは動くが Obsidian は同期フォルダ内のアクティブ vault を明示的に非推奨にしている。古典的失敗: .obsidian/workspace.json が書き込み中に踏まれる、プラグインキャッシュ同士の race、編集中の添付ファイルが同期される。それでもみんな zero-setup を理由に使い、大抵は動くがそうでないこともある。
クラウドストレージ経路は以下なら OK:
- 同時編集デバイスが 1 つだけ
- たまの conflict-copy 手動掃除を許容できる
.obsidian/に頻繁書き込みするヘビーなプラグイン群を使ってない
これらが当てはまらないなら、Obsidian-aware なツール — Sync、このプラグイン、Syncthing — を。
vs Obsidian Git
「保存ごとに commit したい」場合は美しい:
git log/git blameによる本物のバージョン履歴- 任意の git ホスト(GitHub, GitLab, セルフホスト Gitea / Forgejo)で動く
- 無料
代償:
- モバイルが脆い — 各種モバイル Git プラグインは存在するが、認証変更、巨大リポジトリ、iOS のバックグラウンド同期制限などで頻繁に壊れる
- 競合解決が git 風 —
vimで merge conflict 解決できるなら問題なし、できないなら使い勝手の崖 - 大きい添付(画像 / PDF)が git 履歴を肥大化 — Git LFS が答えだが、Obsidian vault 内で正しく設定するのは非自明
しばしば最良なのは このプラグイン + リモートで日和見的に git mirror(リモートで git commit -am snapshot && git push を 1 時間ごとに cron)。このプラグインの編集モデル + git の履歴が両立し、Obsidian 側は git を意識せずに済む。
vs Nextcloud (Obsidian クライアント連携)
Nextcloud は「セルフホスト全部入りクラウド」が欲しい場合の自然な答え。Obsidian 観点での比較:
- Nextcloud のデスクトップ / モバイルクライアントがファイルをローカルフォルダに同期、Obsidian はそのフォルダを vault として開く。形は Dropbox と同じだがセルフホスト
- Dropbox と同じ「同期フォルダ内 vault」の鋭利な角が出る。ただし Nextcloud の競合処理は一般により綺麗
- モバイル動作する — Nextcloud の iOS / Android アプリは成熟
- 運用面でかなり重い — PHP スタック、データベース、定期アップグレード、たまにストレージ corruption。Nextcloud をきちんと運用するのはそれ自体が時間投資
既に Nextcloud を運用しているなら、このプラグインは不要かもしれない。Obsidian のためだけに新たに導入するなら、このプラグインのほうがずっと小さい surface area。
vs Remotely Save プラグイン
Remotely Save は人気の「vault を S3 / Dropbox / OneDrive / WebDAV に同期」プラグイン。モデルが違う:
- Remotely Save: local-first、リモートオブジェクトストアへの周期同期。vault は全デバイスに、クラウドは sync target
- このプラグイン: remote-first、サーバを直接編集。vault はリモートのみ、ローカルは window
Remotely Save が向くケース:
- local-first モデルを保ちたい(オフライン編集、高速ファイル op)
- リモートが SSH ホストではなくオブジェクトストア (S3, R2, Backblaze, OneDrive) である
- モバイル必須
このプラグインが向くケース:
- vault の N コピーが嫌
- SSH 到達可能なホストがある
- LAN / Tailscale 越しに sub-second なファイルオープンが欲しい(デバイス間の “sync delay” がない)
余談: このリポジトリはもともと Remotely Save の fork から始まり、アーキテクチャが乖離して別プロジェクト化しました。目標が違い、トレードオフも違う。
「2 つ並行して使える?」
可能 — 互いに排他ではない:
- このプラグイン + Obsidian Sync (モバイル限定): Sync をモバイル橋渡しだけに使い、デスクトップはこのプラグインで。Sync から見るとリモート vault は単なるファイル群で、競合面は「モバイル編集とデスクトップ編集が衝突するか」だけ — これはツール 1 個でも同じ問題
- このプラグイン + git mirror: 上で書いた通り — リモートで時間ごとに
git commit && git pushcron、編集経路に履歴コストを払わずに git 履歴を得る - このプラグイン + restic / borg backup: バージョン履歴が重要なら必須の組み合わせ。backup recipe(英語)
レプリケーション系を 2 つ重ねるのはダメ(Sync + Syncthing を同 vault に当てるのは grief レシピ)。非レプリケーション系との組み合わせ(モバイル橋、履歴 snapshot、バックアップ)はむしろ正解になることが多い。
関連
- FAQ — 短い比較表 + よくある質問
- Obsidian Sync からの移行(英語) — 既にこちらを選んだ場合
- Backup & restore(英語) — バージョン履歴ニーズの必須相棒
- Architecture(英語) — remote-first モデルの実装
- Roadmap(英語) — モバイル計画(v2.0)含む